遠くの見ず知らずの惑星
新宿には年に1、2度しか行くことがない。新宿は、若い頃から苦手な街だ。いつ訪れても道に迷ってしまう。最初の西新宿の目的地は、そんなに迷わずに着けたが、今回もそこから南口側からほど近い次の目的地までは、迷いに迷ってしまった。
銀座や東京駅周辺に比べ、新宿は広くて複雑だ。今程、新宿が複雑でなかった若い頃も友人と紀伊國屋で待ち合わせたときに、何と紀伊國屋の通りの向かい側で紀伊國屋の場所を聞いて恥をかいたことがある。
私が、もともと方向音痴ということもあるのだが、それにしても現在の新宿は、広くて巨大過ぎるように思う。銀座や東京駅の地下街の雑踏は苦にならないが(ただし、東京駅の総武快速線の地下駅だけは遠くて閉口する。大江戸線の不人気もやはり深くて遠い地下駅が原因だ。)、新宿の雑踏は正直、苦痛だ。新宿を歩いていると、どこか遠くの見ず知らずの惑星に来たような錯覚に襲われる。駅周辺の店は、どこも人だかりで落ち着ける場所がない。
一極集中の象徴
そしてこの街は、段差だらけだと思う。駅の階段、高層ビルの入口の段差、横断歩道橋等々、老人や幼児を連れた母親には優しくない街のように思う。駅の反対側に行こうとするだけで往生してしまう。新宿に比べ、東京駅は、これ程、複雑でないように思う。新宿駅は巨大なコンクリートの迷路のようだ。新宿という街に来ると、私には大き過ぎるということはメリットよりデメリットの方が多いと感じる。
街や駅には適度な大きさというものがあるのではないだろうか。新宿は、日本の一極集中の象徴のような街だと思う。確かに公共交通の利便性は優れているが、生活利便施設という点ではどうなのだろうか。
デパートや服飾品の専門店はたくさんあるが、日用品の買い物や公共機関の利便性はどうなのだろうか。大きな病院はあるが、待ち時間はどうなのだろうか。新宿は、仕事やレジャーの拠点としては、優れているのかもしれないが、生活者としての個人を考えたときに果たして住みやすい街なのだろうかという疑問を私は抱いてしまう。
一極集中でなく、ドーナツ型のコンパクトシティの方が望ましのではないだろうか。そう考えるとJRの山手線は、優れた公共交通だと思う。新宿も山手線の一駅だが、そこだけが巨大に膨れ上がり過ぎてしまっているように思う。私には、新宿や渋谷は、疲れる街でしかない。妻に聞いても同じ回答だったので、少なくとも60歳を過ぎた人間には、ちょっとつらい街だ。