海外進出
最近、地方の事業者が生き残るためにはどんな道があるのだろうかと考えてみた。一つは、海外進出だろうか。「ジャパンブランド 第1回 日本式サービス 強さの秘密」というNHKの番組でアジアに進出して1万人の生徒を獲得した大阪の生徒14名の算数塾が紹介されていた。他にアメリカに逆上陸したセブンイレブンが、有識者の予想に反して成功し、2年で黒字化したことが紹介されていた。
コモディティ化
また、日本のノウハウの海外への移転が進んだときに、世界における日本ブランドの価値は、高まるのだろうか。それとも電子製品のように日本のサービスやノウハウのコモディティ化(汎用品化)が進み、長期的には日本ブランドの持つ差別化が薄れていく心配はないのだろうか。例えば、オーストラリアの和牛が、海外で大きなシェアを取っており、生産性の高さから日本より安く、味も変わらないという。
グローバル・スタンダード
一番大事なのは、日本人が幸せになれるかどうかだろうと思う。無論、日本人だけが幸せならいいということではない。日本は、資源がないから海外からの収入を増やす以外に生き残る道はないのだろうか。しかし、海外依存が高まれば、一方で海外の紛争や経済情勢に今より日本の経済が振り回されることになるのではないだろうか。
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バブル後、株式市場の投資の主役は海外資金が中心となり、企業業績より米国経済の動きに連動した短期的な投機で株価が乱高下しているだけのように思う。私は、グロバール・スタンダードなるものを危うく、怪しい実態のないもののように感じている。
実際にグロバール・スタンダードは、英語の本来の意味とは違う和製英語とも言われいる。少なくとも持続可能な経済の構築にとってはマイナスに作用しているように思う。昨日まで世界で圧倒的なシェアを誇っていた企業が短期間に消えていく、ブラックホールがグロバール・スタンダードの隠された姿なのではないのだろうか。
大リーガーと錦織圭
ちょっと脱線するが、日本人の野球選手が大リーグに行くのと錦織圭が海外で活躍するのは、根本的に異なるように思う。大リーグに行った野球選手は、日本人として活躍している訳ではなく、あくまでも大リーグの一員として戦っている。日本人の活躍は日本人の野球レベルの高さの証明にはなっている。日本ブランドのノウハウの輸出は、日本人の大リーグ行きと似ている気がする。優秀な日本人の海外への流出は、日本の野球の低迷につながっているように思う。しかし、プロ野球選手が自ら活躍する場を選択できること自体は否定するつもりはない。
一方、テニスは、海外で活躍しなければ、まともな収入を得ることはできない。錦織圭は、所属している組織のために戦っている訳ではなく日本人として戦っている。錦織圭が活躍することで日本のテニスのレベルアップが期待でき、テニス産業が発展する可能性がある。ノウハウの輸出が、海外に出て行くことでそのノウハウの継承と維持につながるなら、積極的に海外に出て行くべきだと思う。従って、算数塾の海外進出は、必然性があるように思う。
少子高齢化対策と地方の雇用
国内の農業や産業は、今後どうなるのだろうか。少なくとも、今のまま進めば、地方の空洞化が進んでいくことは間違いないと思う。地方の雇用の場が維持もしくは増えない限り、日本の未来はないように思う。海外への進出が増えて若者が海外に出て行くだけなら少子高齢化は、ますます進むように思う。だが、ノウハウではなく、日本の独自技術で作られた商品が輸出されるなら、雇用の維持や創出に役立つように思う。少子化の歯止めにつながるかもしれない。
若者が働きたいと思うような収入の実現
米の生産性を上げなくてはいけないことは、間違いないだろうと思う。米価を維持してもそもそも農業の担い手が減っていく現状では単なる限界産業の保護にしかならないのではないだろうか。農業従事者が減って行く中で農地を集約して生産効率を上げて収入を増やし、若者が働きたいと思うような収入が確保できる環境づくり以外、農業の未来はないように思う。
しかし、一方で国内の米に対する需要が減っているのも事実だ。作っても買ってくれる消費者が増えなければ、農業従事者の収入は増えない。また、生産過剰により流通からの値下げ圧力が高まり、利益が出る価格で売れなければ、事業を継続することはできない。
生産性の向上と付加価値
ではどうすればいいのだろうか。作っても流通業者から買い叩かれるなら生産性の向上による事業の優位性は期待できない。それどころか安さを求める消費者のために流通事業者は安売りを追求するか、あるいは客寄せのための採算を無視した販売を行う可能性すらある。これでは、生産者も流通事業者も疲弊するだけのように思う。やはり、生産者も流通事業者も付加価値のあるモノを販売するしかないと思う。そうしなければ従事する労働者の幸せにつながらない。
単に作るだけ、売るだけという業態は、果てしのない価格競争を続けるしかなく、ダイエーの創業者が唱えた「価格破壊」は結局、労働者でもある消費者の幸せの実現に貢献していないように思う。今、一番困窮しているのは、価格勝負の単純生産者と単純販売事業者のように思う。
デフレ経済下で原価の中で大きなウェートを占める人件費の圧縮をこれまで行って利益を維持してきたが、人口減少による人手不足でこうした経営手法はもう成り立たなくなってきている。そして、少子高齢化により消費自体が縮小していくことになるだろう。老人は、所得の低下だけでなく、食品の消費量自体が減るのでその購買力は自然に落ちて行く。若者は、絶対数の減少と消費財に対する関心の多様化と低所得により購買力の縮小が進むだろう。
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規模の経済から持続可能な経済への転換
今のままでは、「そして誰もいなくなった」という流れに漂流しているだけのように思う。子供の頃に描いていた、社会が豊かになり、皆が幸せになる日は来ないように思う。しかし、昔、頭に描いていた絵を掛け替えれば、違う風景が見えてくるのではないだろうか。
規模の経済が必ずしも幸せでないことを我々は十分学んできたはずだ。海外の需要を取り込むだけの行動は、これまでの規模の経済を追っているだけのように思う。海外の需要の取り込みは、ある意味、進出先の国から資源と富を奪う行為でもある。進出時は、進出先の需要の創出と経済発展に貢献するかもしれないが、進出先の国の経済が成熟したときには、歓迎されない存在になっているかもしれない。
進出した国が成熟したら、また次の進出先を見つけて移動するのだろうか。しかも、その時は、それまでに進出した国の事業者が成長し、日本より上手に新しい市場を開拓していく可能性もある。最後は、地球以外の惑星にでも行くつもりだろうか。
こうした行動は、その時は正当化する理由があるが、経済の持続的発展など存在しないように思う。目指すべきは持続可能な経済であり、持続可能な社会なのではないだろうか。原発による電気にいつまでも頼れないことは今では誰もが気がついているのではないだろうか。未来に対するビジョンのない行動の先に幸せはないように思う。問題の先送りの終点は、引き返しのできないどん詰まりの可能性がある。
現在必要なのは持続可能性を考えた方策だと思う。例えば、農業の場合、農地の集約化による生産性の向上は、少子高齢化社会の中で必然のように思うが、農業従事者の生活に必要な利益の確保が前提になる。作るだけでは買い叩かれる可能性が高く、十分な利益が確保できず、結果、事業の継続が困難になり、産業の衰退は避けられないように思う。
まず、自ら売ること。そして、収益の柱として生産物を自ら加工して売ることではないだろうか。自ら生産物を売り、加工すれば、新鮮で安全な商品を消費者にアピールできると思う。自ら加工する場合、自ら作った生産物を使うことで原価が抑えられ、商品の原材料の透明性も高まり、販売において差別化が可能になり、利益の確保がしやすくなるだろう
。
しかも、加工事業により農作業の繁閑を調整することが可能になり、新たな雇用にもつながるだろう。少子高齢化社会では組織的な事業しか、農業の再生はできないように思う。ただし、販売と加工をやるからには、生産だけでなく、販売や加工のプロになるべきではないだろうか。無論、小規模な事業なら、反って家庭的なスタイルが消費者から受け入れられるかもしれない。
流通事業者はどうすればいいのだろうか。小売事業者が生産事業に進出している事例はあるが、それが事業の差別化につながっているのか不明だ。おそらく、取扱品目の一部の野菜を自社系列の農業法人で生産する程度が限界のように思う。売上げの何%だろうか。
農産品については、産地に近いところで消費することで鮮度と輸送コストの低減効果が期待できるが、大手のスーパーのように大量仕入れと大量販売をベースに多種の商品を販売している事業者が生産事業に参入しても本業自体の差別化や利益の増大につながらない気がする。
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差別化
一方、コンビニは、おにぎりや弁当、おでんの自社工場での加工製造が差別化につながっているように思う。私もおにぎりは、コンビニで買うことがほとんどだ。コンビニの惣菜が売上げの何%なのか知らないが、おそらく利益には大きく貢献しているように思う。そして、おにぎりや弁当を購入した人がサラダやデザート、飲料等をついで購入してくれる訳だから加工製造は明らかに本業にプラスだ。私自身、おにぎりを買うときに直接関係のない商品も多少値段が高くても買うことが多い。
→セブンが独走し明暗分かれるコンビニ業界--セブン好調はマック低迷と関係!?~「これからはコンビニは単なる小売業ではなく、地域の生活総合サービス産業に変身していく」
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この間、ブログで紹介した仙台郊外の秋保おはぎで有名な「主婦の店・さいち」(ブログタイトル「共存共栄」)では惣菜が売上の半分を占めており、おはぎの売上が惣菜の半分以上あり、これがさいちの差別化の源泉になっている。
一方、この間、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で紹介されていた「シャトレーゼ」は、加工事業者が独自の販売網を構築して自社販売することで成功している事例として紹介されていた。こうした事業者の手法は異なるが、ひとつ共通しているのは「おいしいもの」を販売しているということだ。安心・安全は当然ながら、食ビジネスはおいしくなければ成り立たない。
正直、カンブリア宮殿を見るまで「シャトレーゼ」については安売りのシュークリーム製造販売事業者ぐらいのイメージしか持っていなかった。しかし、それは、昔のことだった。やはり、事業の持続性は、消費者のニーズと利益を優先しながら共存共栄と差別化を構築する以外には実現できないのではないだろうか。消費者が買いに行きたくなるような商品の差別化が大切だと思う。同じモノを売るだけなら、価格競争しか生きる道は、残されていない。と考えた。
*周辺にないものは使わない。とてもシンプルだが、ここまで徹底的にローカルにこだわったレストランはこれまでなかった。グローバリズムが進めば進むほど、ローカリズムは差異化を生む武器となる。
*農業生産物はそのままでは小さな経済規模でも、調理加工をすることで価値は増す
〇行政や農協から「犯罪者」扱いされながらも… 秋田・大潟村「あきたこまち生産者協会」の戦い
〇埼玉県日高市-サイボクのライフピア構想 -農業版デズニーランドをめざす憩いのオアシスー
〇不振イオン、打開策・規模拡大戦略の成算は?スーパー業界、「価格重視」からの転換点か
〇ワタミはなぜここまで凋落してしまったのか 102店の大量閉鎖を招いた真因
〇農業再生の主役争奪戦 日本最大の巨大農家を目指すイオンの野望
〇「すべて地元産」ブランド化が雇用生む 人口病に克つ 地域を創り直す(4)
〇幸楽苑が「290円」ラーメン販売中止へ 売れれば売れるほど利益率下がっていた
〇衰退産業で稼ぐ!「夢の魚」を編み出した男 愛媛産のシラスが全国で飛ぶように売れるワケ
〇日本のサービス産業の海外進出と課題-中小・中堅、地方企業の事例をふまえて
〇ガラガラのイオンモール…東南アジア進出は失敗?来店者もウィンドウショッピングのみ
*「昔ながらのローカルな市場で買い物をするのが当たり前なカンボジア人にとって、あまりにも世界が違うのです。早朝6~7時に市場に生鮮食品を買いに行く彼らにしてみれば、イオンの9時オープンはライフスタイルに合っていません。…価格設定があまりにも生活実態とかけ離れているため、イオンはいつもガラガラです。休日は比較的来店者も増えますが、ウィンドウショッピングばかりです」
*「イオンをはじめとする大型スーパーやチェーン店は、日本の田舎の姿を一変させました。どこに行っても同じ店、同じ景色が続きます。『それを東南アジアにも持ち込むのか』『文化が失われてしまうのではないか』と懸念する地元の人も多くいます」
〇危機マック社長は本社にこもり机上の空論ばかり 好調モス経営陣は消費者&現場と対話徹底
*接客品質底上げを土台にした「手づくりの魅力的なメニュー」が競争力となり客足が戻り、売上高が前年同月比増を続ける店が増加していった。
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