HALという言葉を聞くと我々の世代が真っ先に思いつくのが、「2001年宇宙の旅」という映画だ。この映画に登場した史上最高の人工知能型コンピュータが「HAL9000型コンピュータ」だ。この映画は、スタンリー・キューブリックが監督・脚本し、1968年4月6日にアメリカで初公開された。公開当時、2001年は、近未来というより、子供の私には、遠い未来のように思っていた。
しかし、2001年自体が、過去になった現在、私は、人工知能がこの先、実現するだろうかということには懐疑的だ。日本でも、「第5世代コンピュータ」プロジェクトという人工知能開発プロジェクトがあったが、結局、人工知能は未だに実現していない。私は、人工知能については、実現しないだろうと思う反面、実現して欲しくないという気持ちがある。
人間がコントロールできないような技術は、原子力だけでもうたくさんのように思う。昨夜のカンブリア宮殿に登場した「HAL」は、無論、人工知能ではなく、生体電位信号を読み取り動作する世界初のパワードスーツだ。HAL(ハル)は、「Hybrid Assistive Limb」の略称だ。
今回、番組で取り上げられたHALは、下肢の動きをアシストするタイプのもので、脳から出された、足を動かす命令(電気信号)を取り出して麻痺した下肢の動作を支援する装置だ。脳からは、たくさんの様々な信号が発せられるが、信号は目的の部位に近づくに従い、整理される。こうした信号が、微量だが、皮膚の表面から漏れ出すという性質を利用して足の皮膚の表面から足を動かせという微弱な信号を取り出して足が動くのをアシストする装置がHALだと開発者であり、CYBERDYNE株式会社のCEOである山海嘉之氏が説明していた。
CYBERDYNE社と言えば、あの「ターミネーター」という映画で、人類の敵となる人工知能システム・スカイネットを生み出した企業と同名だ。山海氏は、映画ファンなのだろうか。どうして、映画に登場した企業名や人工知能名を会社名や製品名に採用したのか調べていないので分からない。しかし、「科学は人の役に立ってこそ意味がある。人のため社会のためにテクノロジーは使われるべきだ。」という筑波大学大学院システム情報工学研究科の教授でもある山海氏の話にはとても共感できた。
番組の中で脳卒中で足が麻痺した女性が、ロボットスーツHALによる機能回復トレーニングを受けた後、何の介護も必要とせず、健常者と変わらない様子で歩く姿を見て感動してしまった。私の父も脳卒中で半身麻痺になり、亡くなった。もう、三十数年経つ。当時、HALのようなシステムでリハビリを受けられたらどんなに良かっただろうと思った。番組では「脳卒中や脊椎損傷で歩くことが困難になった人々の願いはただ一つ。“再び自分の足で歩きたい”。その人たちに希望を与えている。」とHALを紹介している。 おしまい
*ワトソンは利用者が入力した文章を自然言語処理の技術で解釈し、ビッグデータ分析などの技術によって質問の答えを導き出す。
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