高度プロフェッショナル制度
昨日のテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」の放送を見て呆れてしまった。最初から結論ありきの内容になっていた。一つは、政府が閣議決定を予定している「高度プロフェッショナル制度」(この間まで「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼んでいた。)だ。
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放送の冒頭に新興のラーメン店が紹介されていた。賃金ランクに社員Aから社員Dまであり、B以下は労働時間で年収が400万円、300万円、150万円と分かれている。しかし、社員をアルファベットでAからDに分類するセンスには驚いてしまう。社員Aは、店舗の統括責任者で年収は1,000万円以上だという。仕事のないときは早く上がれるからいいと言っていた。
しかし、高度プロフェッショナル制度は、「対象が年収1,075万円以上の専門職で金融や製薬会社などに導入」する予定ではないのか。ラーメン店の賃金制度と高度プロフェッショナル制度にどんな関係があるのだろうか?お粗末な急場しのぎの番組制作だ。
人件費をコントロールしやすく、抑制につなげることができる
また、タカラトミーの人事担当者は「ストレートに言うと、人件費をコントロールしやすく、抑制につなげることができる。」と高度プロフェッショナル制度を評価していた。タカラトミーは現在、社員のおよそ半分について毎月の労働時間を180時間と設定して賃金が変わらない裁量労働制を導入しているという。
ただし、休日出勤手当や深夜手当はつく。だから(休日出勤手当や深夜手当のない)高度プロフェッショナル制度が実現すれば導入する考えだと答えていた。高度プロフェッショナル制度は、労働者側から見たら、労働条件が合法的に切り下げになることになる。
高度プロフェッショナル制度は裁量労働制より労働条件を悪化させる
安倍首相が制度の名称を変えたのは、「ホワイトカラー・エグゼンプションが、ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度という意味」になることを嫌ったためではないだろうか。周囲のお友達ブレーンの提案だろうか。早稲田大学政治経済学部教授の原田氏は、「現行でも、労働時間に拘わらず成果で給与を決めることのできる職種は多い。管理職の他に、厚生労働省は19の業種について、裁量労働制という名で、そうすることを認めている。具体的には、理系・文系の研究職、ソフトウェア開発者、ジャーナリスト、デザイナー、番組のプロデューサーやディレクター、コンサルタント、インテリア・コーディネーター、アナリスト、金融エンジニア、大学教授、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士など。他に外回りの営業マンもある。」と制度の導入に疑問を投げかけている。
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「ただし、日本制では、休日や深夜勤務には残業代が発生するが、ホワイトカラー・エグゼンプションでは、これが付かない。」ことを指摘している。だから、高度プロフェッショナル制度は、現在、既にある裁量労働制の労働条件を下回ることになる。いずれは低い労働条件の制度に一本化されるのだろうか。前述のタカラトミーの人事担当者の発言は、そのことを言っていたのだろうか。
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現在でも少子高齢化と非正規社員の増加で様々な職場で日常業務の労働力不足により若い優秀な社員の負担が過重になっており、体調不良や精神疾患を訴える人も多い。実際に時間に縛られずに働ける人がどれだけいるだろうか。病気や介護等で休職している人の分をカバーしてオーバーワークになっている人も多いはず。もし、成果だけで賃金が決まる制度になったら、自分の成果に関係のない同僚の仕事をカバーするような人はいなくなってしまうだろう。
現場を知らない学者や評論家
ちなみに、前出の早稲田大学教授の原田氏の論文の主張は、無能な中間管理職のせいで従業員が無駄な残業をしているという見解が主体になっている。確かに上司のための無駄な会議や上への報告資料の作成で自分がするべき仕事の時間が奪われ、結果、残業につながっている場合も多い。しかし、その他にも役所向けの理不尽とも言える書類づくりに取られる時間やコンプライアンスと呼ばれる点検業務で自分の仕事が圧迫されている人々は多いと思う。規制緩和で仕事が減るのかと思ったら、見返りのコンプライアンス業務でかえって仕事が増えているケースもある。
現場を知らない大学の先生の言っている程、問題は単純ではない。人手不足の中、現場の人は、病気や用事で同僚や部下が休んだときにその仕事は自分の仕事ではないからできませんとか、やりませんとは言えない場合がほとんどのように思う。そう言えるのはドクターXだけだ。まして顧客に影響するような業務は、担当が休んでいるのでというような言い訳は通用しない。そうした現場の労働環境を抜きにして軽々しく、時間でなく、成果で賃金をなどと言われても労働者には通用しないと思う。企業は、欠員が生じたときにいつでも必要な代替要員を確保できる体制が求められるだろう。
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時間でなく成果に対して賃金を払うというウソ
裁量労働制の対象になっている現在の職種は、サラリーマンというより、もともと個人型の業務委託が適している業務だ。(私は、法律の専門家ではないので業務委託という言葉を委任と請負の両方を含むものとして自由に記述している。)だから企業に属さずに委託型のフリーランスで働いている人が多いように思う。
請負型の契約であれば、成果で支払われる形は妥当性があるようにも見える。しかし、一般の業務委託は見積もり段階では、業務にかかる人件費は、労働時間をベースに計算されている。そして、受託者 の責任でない追加費用については、委託者が負担する契約が普通だ。しかも、よくよく考えれば通常の業務委託の対価は、「成果の報酬」ではなく、「業務遂行料」だ。弁護士報酬(成功報酬を除く)は、訴訟の勝ち負けに関係なく、報酬が支払われる。何故、企業内の専門家についてだけ成果に対する報酬が求められるのだろうか。
企業内で働く社員は、会社の業務命令の下で働いており、社員の行った仕事の成果の最終的なリスクは、本来、個人でなく、企業が負うべきものであり、社員は、基本的には企業業績の結果としての事業収益によって将来の賃金が変動することを受忍するだけのように思う。雇用契約は、元々、時間当たりの賃金をベースにしており、だから最低賃金も時間給で決められているのではないのか。
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成果という言葉自体、極めてあいまいであり、人事とか経理等の間接部門に働いている人の成果を客観的に査定することは不可能だと思う。例えば、経理伝票を短時間で入力した場合と経理上の重大なミスを発見し、訂正した場合はどちらが成果として点数が高いのだろうか。
時間でなく成果で賃金を決めるという言葉は一見もっともらしく聞こえるが、中身を問われたときに客観的に答えることができない類いのものだ。だから、企業の成果である収益を企業全体でどう配分するのが公平かという観点以外に望ましい賃金配分というものは存在しないように思う。そして、利潤については株主、役員、従業員に対してどう配分するかは、企業の持続性をベースにして議論されるべきように思う。
ところで、建築士や不動産鑑定士の場合、資格を持っていても実務知識のない人は企業の中にいくらでもいる。要は、現在、企業の中で高額報酬をもらっているレベルの専門家は、極めて優秀な人たちだと推測される。だから上記のような視点から考えると時間でなく、成果に対して賃金を払うというのは口実に過ぎないように思う。
最初は、優秀だけど他社に移籍する心配のないような人たちの賃金負担を抑制することが高度プロフェッショナル制度の目的のように思う。制度が浸透した後に対象者が拡大される可能性が高い。何故なら企業側の導入の狙いが、人件費抑制のためなのは明白だからだ。
業績評価制度と残業代0制度、そして従業員解雇制度の緩和
過去に業績評価制度を導入した企業で現実にうまくいっている企業は皆無のように思う。大半のサラリーマンは、成果が出やすい目標を選び、業績目標をなるべく小さく設定する傾向がある。そして、自分の成果に関係のない業務を嫌い、人間関係が悪化した企業は多い。もし、業績評価制度がこの「残業代0制度」で補強されたら、間違いなく組織力で目標を達成しようという仕組みは崩壊してしまうだろう。ちなみにこの業績評価制度自体がペーパーの作成や打ち合わせ業務を増やしている側面もある。
時間に関係なく成果で働くというのは言葉で言う程簡単ではない。成果を測る公平な物差しなど存在しない。経済界は、企業が従業員を解雇しやすい法制も求めており、こうした制度が揃えば、成果が出ていないという理由で労働者のクビを簡単に切ることができるようになる。名目的には時間に拘束されないけど、いつ職を失うか分からないますます不安定な社会になるだろう。
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誰もが納得する公正な処遇などというのは幻想に過ぎないから、こうした制度を導入した企業は、社員が客の方を見ず、自分の成果だけを考える内向き思考になり、会社に対する帰属意識も希薄化し、業績が低迷したときには辞めて欲しくない優秀な社員から辞めて行く可能性がある。少子化による労働不足が続くことが予想されるときに定着率が下がるリスクも高くなるだろう。
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辞めた社員の仕事を他の社員に振り分けることにより、仕事量の配分に対する不満や負担感を抱える社員が増加し、欠員補充のためのリクルートコスト、職場の雰囲気の悪化と社員の士気の低下による業績への影響が予想され、企業にとってこうした制度はマイナスにしか働かないように思う。賃金の多寡に関係なく、企業が人材を大切にしていないという負のメッセージは、会社の業績に大きなダメージを与えることになるだろう。人材はコストでなく、利益を生み出す貴重な資源ではないだろうか。
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賃金上限制
企業の業績が下がれば、賃金を下げることは、簡単にできる。業績を理由に高度プロフェッショナル制度対象外の社員に降格すればいいからだ。そして企業の業績が上がっても賃金は増えない可能性が高い。企業の業績向上と個人の業績に明らかな因果関係がないことを理由に賃金が上がるどころか、下がる場合もあるのではないだろうか。労働者は、プロの野球選手と同じ扱いになるのかもしれない。労働者は成果を評価される立場に過ぎなくなるだろう。要は、この制度は、企業が人件費を抑制するための「賃金上限制」もしくは「賃金打ち止め方式」に過ぎないように思う。
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成果という意味では政治家こそ成果で評価されるべきだ。安倍首相は、何か成果を挙げたのだろうか。株高も日銀や年金資金による官製相場が指摘されている。極端な円安誘導は、輸出産業の手取額を膨らませたが、多くの中小企業は、原材料高の高騰に直面して疲弊しており、従業員の実質賃金は低下し、家計の消費支出は減っている。アベノミクスは、安倍首相が主張した成果を実現していないように思う。第一優先だったはずの福島の復興は本当に進んだと言えるのだろうか。少なくとも、被災者には、その実感はない。
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牙を剥いたオオカミ
安倍首相は、昨日の国会で防衛省の文民統制の変更について質問されて「国民から選ばれた首相」が決めるのが、文民統制だと言っていた。アベノミクスの評価で解散総選挙を戦ったはずなのにアベノミクスとは無関係の改憲に向けてまっしぐらだ。選挙で勝てば何でもできるのだろうか。直接選挙ではないので国民には、安倍さんを首相に選んだという思いはない。国会で野次を飛ばし、マスコミの報道に圧力をかける一方で、自分の政策に反対する邪魔者は、マスコミに情報を流して攻撃する姿は、手段を選ばない、牙を剥いたオオカミのようだ。
経営者側は、何かというと成果主義を主張し、業績が悪化すれば社員をリストラするだけで、自分たちは生き残り、高額の報酬をもらい続けていることが多いように思う。また、業績不振で引責辞任した経営者が他の企業の経営者になっていることも多い。一方で業績不振から復活した企業は、ほとんどの場合、従業員を大切にすることに目覚め、企業行動を改めることで再生したケースが多いように思う。きれい事ではなく、企業は、人がすべてでないだろうか。
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ウーバー
もう一つの話題は、米発祥のウーバーだ。「ウーバーは、いま世界290都市でタクシー事業などを展開する注目の新興企業」だそうだ。ウーバー・ジャパンが2月から福岡市で新しい実験を始めたが、「開始1ヵ月で国土交通省が中止命令を出す異例の事態に」なったことを報じていた。国交省が、「道路運送法が禁じている無許可のタクシー営業『白タク』に該当する可能性が高いと判断」したためだ。私は、福岡の実験の様子の映像を見て、一瞬でこれは「白タク」ではないかと思った。だから、その後の中止命令を伝える内容についてはしごくもっともだと思った。
→UberやLyftの“シェアライド”は 日本で普及するか(上)
→UberやLyftの“シェアライド”は 日本で普及するか(下)
グロバール・スタンダード原理主義者
ところが、この日の番組のコメンテーターのロバート・アラン・フェルドマン氏(モルガン・スタンレー証券経済調査部長)は、(「大学卒業基準として、TOEFLを利用する」ことを主張している。英語は?上手なのかもしれないが、日本語はお世辞にもうまいと言えない。モンゴル出身の力士を見習ったらどうだろうか。私は、正直、英会話能力と仕事の能力は、別だと思っている。)こうした新サービスを規制すべきでないとまくし立てていた。
キャスターが安全性の問題を指摘するとしどろもどろになっていた。高度プロフェッショナル制度についても、反対する労働者の声をアベノミクスを妨害する行為だと非難していた。この人を米国の利害代弁者に過ぎないと感じた視聴者は、私だけではないように思う。外資系証券会社は進出した市場で自分たちに有利な規制緩和を叫ぶグロバール・スタンダード原理主義者に過ぎないと私は思っている。証券会社のアナリストは、そんなに優れた経済問題の専門家なのだろうか。安倍首相が志向している社会は、米国型の経済社会なのに何故、憲法だけを米国の押しつけたものだと主張するのだろうか。 おしまい
→「タクシーは危ない!」ドライバーが告発するゾッとする実情~規制緩和の理屈を、そっくりそのまま、乗客の安全がかかっているタクシーに当てはめようとしたこと自体が間違っていたのではないか。
(追記)
高度プロフェッショナル制度は、結局、グローバル展開でのコスト優位性だけを追及する大企業迎合政策に過ぎないように思う。どうして、残業自体を減らす取組を企業に求めないのだろうか。企業も無駄な会議や社内報告を減らし、仕事を効率的に行う仕組み作りに腐心するべきだ。
そして、過大になりがちな中堅社員の仕事量を減らすための労働環境作りを進めるべきだ。雑務を昔のような本当の意味での「アルバイト」(短時間労働者)で処理することで中堅社員の負担を減らし、結果、残業がなくなるような労働環境の構築が必要なように思う。私は、顧客に対するサービスが劣化するアウトソーシングには懐疑的だ。内製業務としてやる場合と外注業務として作業する場合では、明らかに作業者の仕事の質に差があるように思う。
(追記2)時間か成果かという問題
時間か成果かという問題をもう一度考えてみた。時間でなく成果に対して賃金を払うというなら対象の従業員は会社に出社する義務もなく、遅刻や早退の扱いも受けないことに合理性があるように思う。また、求められた成果に関する業務以外はする必要がないことになる。就業規則の対象外にしたらどうだろうか。
時間と成果を対置して考えること自体、もともと無理があるように思う。労働基準法の趣旨は、労働者の長時間労働を制限するためであり、所定の労働時間を超える労働を抑制するために割増賃金が設定されているはずだ。無制限の長時間労働から労働者を守るのが目的のはずだ。裁量労働制も休日や深夜勤務に残業代が発生するのは、同じ趣旨のはず。だから高度プロフェッショナル制度は、最低限の労働時間制限すらはずすものだと考えられる。
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サラリーマンは、時間拘束されている労働者だから就業規則が作られ、管理されている。就業規則対象外の経営陣が成果報酬がベースなのは当たり前だ。会社の業績は、経営陣の経営の結果(成果)であり、見返りとして高額の報酬を受けているのだからその結果(成果)で報酬が決まるのは合理性がある。
しかし、サラリーマンは、裁量労働制対象の職種ですら自分の裁量だけで仕事をしている訳ではない。通常、時間拘束されて働いている。また、時間以外に客観的に賃金を決める物差しがないから、裁量労働制を導入しているタカラトミーも毎月の労働時間を180時間と設定して賃金を決めているのだと思う。
外回りの営業も商品が売れなければ賃金が払われない訳ではない。通常、賃金は基本給と歩合からなっている。これは、時間給と成果給で賃金が構成されているということだろう。成果給は、時間給に対する付加給だと考えられる。成果給を付加給もしくは加算給と考えれば、事務職であっても成果給を設定することには合理性があるように思う。
例えば、経理担当の社員が標準の経理データを超える件数を処理したり、システムの業務改善をしたときに成果として付加給を払うことは合理性があるように思う。時間給は労働者の生活給であるということを忘れてはならないと思う。
結局、サラリーマンについては時間で賃金を払うか、成果で賃金を払うかの選択はないように思う。時間か成果かという2択で賃金を考えることはできない。成果の判断は、経営側の裁量でどうにでもなり、要は経営自由度だけを追及する経営側のエゴにすぎないように思う。高度プロフェッショナル制度をどうしても導入するなら罰則付きで休日勤務と深夜勤務を禁止すべきだと思う。そうでないと労働者は際限のない長時間労働が求められる可能性が高い。
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グローバル経営のためにコストを抑制したいなら、いっそのこと一切の時間外労働を禁止したらどうだろうか。1日8時間を超える労働と休日勤務を罰則付きで法律で一切禁止にしたらどうだろうか。これにより長時間労働がなくなり、ワークシェアリングが進むのではないだろうか。
時間に縛られずに働きたい人は起業して経営者や個人事業主になればいいのではないだろうか。社会から長時間労働もなくなり、起業が増えて経済が活性化するかもしれない。
(もう一つの問題~派遣法改正)
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