集団的自衛権 限定容認「評価」53%って本当?
3月23日の紙面で読売新聞と日経新聞がともに世論調査を発表した。読売は、一面で『憲法改正「賛成」51% 集団的自衛権 限定容認「評価」53%』と報じている。
一方、日経は、『集団的自衛権、賛成3割・反対5割 本社世論調査 内閣「支持」51%、「不支持」33%で横ばい 』と報じている。一見すると集団的自衛権についての調査結果が真逆のように見える。
しかし、調査の期間が両社で異なり、読売の「憲法に関する全国世論調査(郵送方式)」は、3月20日の安全保障法制の整備についての自民・公明両党の正式合意前の1月下旬から2月下旬に実施されたもの。一方、日経の調査は、3月20日から22日に乱数番号方式で電話により実施されたもの。
集団的自衛権について日経の調査は、「アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃されたとき、日本が攻撃されていなくても反撃する権利を集団的自衛権といいます。政府・与党は集団的自衛権の行使に関する法律を今年の通常国会で成立させる考えです。あなたはこれについて賛成ですか、反対ですか。」と具体的な各論ベースの質問をした上で回答を得ている。
これに対して読売の調査は、『政府が憲法解釈を見直し、集団的自衛権を限定容認に使えるようにしたことを「評価する」』か、『「評価しない」』かという総論で質問をしただけだ。世論調査(紙面報道の内容)も憲法に関する全般的な関心事項(戦争放棄、自衛隊、表現の自由、情報公開、プライバシー、生存権、選挙制度、二院制等々)を網羅的に列挙して選択させた後の質問で「改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」と感想を尋ねている。改憲賛成51%の回答は、安倍政権が目論む憲法改正とは異なるものだ。戦争を放棄することを定めた憲法9条の条項については、84%の回答者が改正の必要がないと答えている。
<読売が4月3から5日に実施した「全国世論調査」では>日経と変わらない結果(追記)
「辺野古移設」評価分かれる、内閣支持率横ばい~新たな安全保障法制の関連法案の今国会での成立については、「賛成」が32%、「反対」が53%…新たな安全保障法制を十分に説明していないとした人は81%に達して…
安倍政権寄りの報道は、新聞への「軽減税率」適用のための配慮か
今回の読売の世論調査の公表のタイミングは、あたかも安倍政権の改憲政策を支持する国民が多いような印象を与える報道姿勢を私は感じる。また、日経の調査は、憲法だけでなく、様々な問題について質問している。しかし、調査項目についての集計結果の中で本文(WEB版)で触れられていない重要な項目があるのは、何故だろう。(紙面では2面に詳しい記述がある。)
例えば、原発の再稼働への賛成が27%しかないことは伝えているが、大手企業の賃上げに関連して世帯所得が増えることが「期待できるか」、「期待できない」かという調査項目の結果については言及していない。質問項目の内訳では77%が「期待できない」と回答している。これは、同じ日経が22日付(WEB版)で『21日まとめた「社長100人アンケート」で、国内景気は「緩やかながら拡大している」とした経営者が全体の74.5%を占めた。』と大きく報道しているのと対照的だ。あるいは、安倍政権の「政治とカネ」の問題への取組について61%が「適切でない」と回答しているのに何故、本文で指摘しないのだろうか。
→安倍政権下で景気回復を実感できない理由 「過去最高水準の賃上げ」に隠れた真実~メディアで盛んに取り上げられている「過去最高の賃金上昇」とは、労働組合がない企業の労働者は含まれていない
こうしたマスコミ(新聞)の報道姿勢が消費税の「軽減税率」の適用と関係していると指摘する声がある。日本新聞協会は、新聞などへの消費税に軽減税率を適用することに多くの国民が賛成しているという調査結果を発表している。これに関して『読売新聞では、「全国の成人男女1210人を対象に昨年11月(2012年11月)に行った軽減税率に関する面接調査の結果」という説明付きで、その結果を詳細に掲載した。
毎日新聞も「新聞に導入 65%肯定的」の見出しで、この数字を紹介している。』というが、『実はこの調査の「対象」となった総数は「4000人」で、1210人は質問に実際に回答した人数なのだ。』というからどこまでマスコミは、国民をバカにしているのだろうか。だから、今回の読売の憲法に関する世論調査の分析も安倍政権支持のための恣意的な意図を感じてしまう。 おしまい
→「軽減税率3案軸に 消費税10%へ検討、政府・与党 酒除く飲食料品・生鮮食品・精米のみ」
→「集団的自衛権の行使容認」~(MEDIA WATCH JAPAN)主要新聞の社説スタンス比較と見える化。賛否が分かれる政治テーマの論点整理。
(追記)
古賀茂明氏が「官邸の圧力で報道ステーション降板」について内情を暴露した報道を知り、やはりと思った。外圧に戦わないマスコミに表現の自由を主張する権利があるのだろうか。それとも自主規制したのだろうか。マスコミは結局、普通のサラリーマン集団に過ぎないことがよく分かった。上に弱い保身の塊だ。
古舘伊知郎は「単なる出入り業者」に過ぎないことを認めているそうだ。結局、おかしいとは思うけど、日本人特有の同調圧に負け、古賀氏にも悪者に見られたくない、あるいは、状況が変わったときのための保険なのか。すべては、自分の保身のための行動。こうしたわざと聞かない行動や見て見ぬ振り、知らない振りが学校や職場でのイジメにつながっている。私は、こうした人たちが一番悪いと思っている。あの時は、しょうがなかったという台詞は、自分の弱さに対する言い逃れのように思う。こうした言い逃れをする人のその後の行動が改まったのを見たことがない。
ネットでは、早速、古賀氏と同じ元通産省の評論家が、もっともらしい根拠を挙げて古賀氏を攻撃している。しかも、官房長官の菅氏と同じやり口で放送法を引き合いに出して(根拠条文をわざわざ掲示)「I am not KOGA 」を叫んでいる。阿倍首相は、国会で「首相にも言論の自由」があるとして放送局に抗議したことを認めているし、菅官房長官も首相にも表現の自由があると擁護している。自分と異なる意見を言う相手の言葉を聞きたくないからとイヤフォンを外したり、国会で野次を飛ばしたりするような人が国民の声に耳を傾けることができるはずがない。
安部首相はそれくらいのことで萎縮するマスコミが情けないとまで言っている。やり返すだけの気概を持ったマスコミはいないのだろうか。それとも表現の自由より経済的利害関係が優先されるのだろうか。言論の自由は、弱い国民の権利を守るためのもののはず。最高権力者に言論の自由などあろうはずがない。
→首相テレビ発言「考えないと報道が萎縮」 民主・岡田氏~菅氏は「総理大臣の地位にある者についても、表現の自由は保障される…」とも述べた。
安部首相が自衛隊を国防軍にするための政策を進めていることは、国民誰もが認識している事実であり、本人もそのための改憲を強く主張している。自分の主張に都合のいい人たちを優遇するお友達政権。大企業でも権力の頂点に登り詰めた経営者が自分になびく取り巻きを上層部に引き上げることが多い。私たち国民は、誰が安倍政権のお友達か忘れなてはならないと思う。安部首相の影響力が落ちたときにこうしたお友達がどういう行動をとるか見極めるべきだと思う。そのときに古舘伊知郎のように「単なる出入り業者」だったという弁解をしない覚悟をしておくべきだろう。
古賀氏は、今回の発言について裁判を起こされてもいい準備までしているそうだ。私は、誰かが言わなければいけないことを自分のリスクを覚悟して言った勇気を応援したい。自己の有利不利だけを考え、「空気を読んで」どちらにでもなびくような保身が私は一番嫌いだ。選挙での有利不利だけで政党を変える議員や政党の支持を受けながら無所属を標榜する候補者に投票するのはもう止めるべきだと思う。
私は、最近、安倍政権に民主党政権末期の頃の厭世気分を感じている。テレビに安部首相の顔が映ると反射的に他のチャネルに切替えてしまう。結局、今の政党は、選挙で生き残ることを目的にした利害関係者の集団にしか見えない。橋下徹に人気があるというだけで群がる政治家ばかりのように思う。国民が望んでいる、財政再建や格差社会の是正、とりわけ若者の所得水準の全体的底上げという政策は、おざなりにされているように思う。多くの若者の所得水準が向上しなければ、決して消費も増えないだろうし、景気も良くならないと思う。そして出生率も上がっていくはずがない。
(追記の追記)
今回の騒動について日経新聞が何も報道しないのは何故だろうか。できれば何もなかったことにしたいのではないだろうか。他の大手新聞も記事の取扱いで報道姿勢が分かる。普段、何かというと表現の自由や報道の自由を主張するマスコミの保身を感じる。危険な場所には行かず、官僚や政治家からの情報頼みのバーコードリーダーに未来はないのではないだろうか。大切なこと、言いにくいことを書けないメディアに存在価値があるのだろうか。それなのにマスメディアの決まり文句は、国民のための活発な議論が望まれるという結びばかりだ。
しかし、騒動後の古舘伊知郎の「テレビ朝日としても、そういった事態を防げなかったという一点において、テレビをご覧の皆様方に、重ねておわびをしなければいけない。」という問題をすり替えようとするコメントにジャーナリストとしての矜持が何も感じられない。ジャーナリストとしての矜持があるなら内容について反論してみろと思う。やはり、用意された原稿を読むだけの「出入り業者」の一人に過ぎないのだろう。ところで、手段を選ばない橋本氏と安部首相がお互いの目的実現のために擦り寄りつつあるようだ。
(私見)景気や株価と改憲にどんな関係があるのだろうか。景気がよくなれば、国民は安部首相の富国改憲に賛成するのだろうか。
→「維新がこちらに近付いている」…にわかに進む「自維共闘」 維新国対に橋下氏の影~「大阪都構想」に安倍晋三首相は理解を示し、橋下氏は憲法改正について「何でもする」と“返礼”している。
→「これで自由に発言していける」〜古賀茂明氏が報道ステーションの放送終了後にネット生出演
→事実無根じゃない! 菅官房長官が古賀茂明を攻撃していた「オフレコメモ」を入手
→内情暴露された『報ステ』古舘伊知郎、本音は「もうやめたい」!? 打ち切り問題が再浮上か
→報ステ古賀氏発言、暴走か圧力か 局側の萎縮懸念~今回の最も大きな問題は、政権与党と放送メディアとの関係だ。官房長官が「放送法」を持ち出したのは非常に巧妙。
〇出版倒産、前年度比5割超の大幅増~ 消費税の増税で販売部数落ち込む ~
*雑誌や書籍など出版物の推定販売金額は、2013年に約1兆6823億円となり、ピーク時である1996年(約2兆6564億円)に比べ、約1兆円も縮小した。
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