ちょっと見直した!砂川判決のテレビ解説
何気なく、チャネルを合わせたら、テレビ朝日のモーニングバードが、安保法制を取り上げていた。どうせ提灯報道だろうと思っていたら、珍しくまともな内容だった。安保法制の合憲性の根拠として政府が引用している「砂川判決」について分かり易く説明していた。判決文からポイントを抽出し、パネルに書き出して政府の見解を客観的に解説していた。
判決の流れと判決のどの部分を根拠に政府が安保法制を合憲だと主張しているのかが政治に疎い視聴者が見ても分かるレベルの簡潔な解説だと思った。見た人が自分で当否を判断できる内容だ。少し流れが変わったようだ。おそらく、ここ最近の国民の関心の高まりが番組製作に影響を与えているのだろうか。国民が関心を持てば、テレビ局も質の高い報道を行う能力が現場には残っているのかもしれない。今回の報道は、ネットの情報とは異なり、生の空気感を伝えることができるテレビの情報伝達能力が生かされていたように思い、ちょっとテレビを見直した。
砂川判決を読んで見た
番組の最後で砂川判決がネットで簡単に検索できること、分量も6頁程なので読んでみて欲しいと締めくくっていたので、実際に判決文をダウンロードして読んでみた。判決の全文は52頁(補足意見を含む)で、番組で6頁と言っていたのは、主文のみのことだ。しかし、この判決は「裁判官全員一致の意見によるものである。」ので主文のみを読めば足りる。
政府は砂川判決で示された「統治行為論」のつまみ食いをしている
番組の中で衆院憲法審査会の参考人質疑で安全保障関連法案について「憲法違反」との見解を示した小林節・慶大名誉教授のコメントを取っていた。小林氏はコメント中で政府は砂川判決で示された「統治行為論」のつまみ食いをしていると指摘していた。判決の統治行為論は「終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。」と結ばれており、最後は、主権者である国民が判断するべきものであることを明記している。
<判決の主文で示された統治行為論部分の抜粋>
ところで、本件安全保障条約は、前述のごとく、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従つて、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであつて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。
合憲・違憲の判断は、付随的なもの
また、砂川判決は「刑事特別法によつて立入を禁止されている施設内に、被告人等が正当の理由なく立ち入つたということだけである。原審裁判所は本件事実に対して単に同法二条を適用するだけで十分であつた。」という事案であり、合憲・違憲の判断は、付随的なものであり、しかもここで問題にされたのは、米軍駐留が憲法違反かどうかである。
最高裁は、「憲法九条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。」として米軍駐留を違憲に当たらないと判断している。
単に「自衛権」の存在が憲法で否定されていないというのが一般的な解釈
だから、砂川判決では集団的自衛権については、何ら言及されておらず、砂川判決から引き出されるのは、単に「自衛権」の存在が憲法で否定されていないという解釈が憲法上の司法を含めた一般的な解釈だと思う。明示的に書いていないから自衛権には集団的自衛権が含まれるというのは、脱法解釈のように思う。安保法制に都合のいい部分だけ引いて合憲性を強弁するような政治家に日本の舵取りを任せる訳にはいかない。
安保法制と同じくらい不安なTPP
TPPを進めるために審議しているTPP関連法案が米国議会で紛糾している。それは、米国を利するはずの条約が米国でも問題になっているからだ。米国では、TPP交渉の内容が、議員に開示されており、その上で協議されているから議論が白熱しているのだろう。それなのに日本では、国会議員にもまったく情報が開示されていない。
→米貿易権限法案の再採決 上院、来週にも~議会下院は18日の本会議でTPA法案と、TPAと一括法案だった貿易調整援助(TAA)法案を分離して、TPA単独の法案を採決し直した。
→TPP、TPA、TAAって何!?TPP条文の公開タイミングを大胆予想!
安倍政権は、現在の国会で改正派遣法を始めとする労働法制と安保法制を維新の党を利用して野党を分断し、数の理論で成立させようとしている。今後、TPPも同じように乱暴な国会運営で進めていくつもりだろう。この3つの法制が成立すれば、日本は、おそらく韓国のような戦争リスクを背負った格差社会となってしまうだろう。貧困による社会不安が増大し、日本は、ギスギスした生きにくい社会になってしまうだろう。
→TPPの早期妥結で本当に米国は潤うのか 中途半端な譲歩はすべきではない
小泉進次郎氏がTPPを支持している
私は、最近まで小泉進次郎氏に大いに期待していた。しかし、大阪都構想に関して発したシルバーデモクラシー発言を聞いてから少なからず不信感を抱くようになっている。私は、進次郎氏に期待をしているが、支持者という訳ではないので、ネットで進次郎氏の情報をこれまで調べたこともないし、ブログも読んだことがない。
しかし、そのうちに安倍政権の不穏な行動にストップを掛けるような行動をするのではないかと期待していたが、そうした気配は、まったく感じられない。所詮、二世議員にすぎないのだろうか。安保法制についてもまったく情報発信が見られない。改憲オタク軍団の隠れメンバーなのだろうか。それでネットで少し調べて見たらTPPに賛成であることが分かった。
無論、TPPに賛成だから、即アウトというつもりはない。国民に中身が分からないTPPに何故、賛成なのかその根拠と自身の見解を発信するべきだと思う。自分は矢面に立たず、法案が成立するのを眺めているなら最低のように思う。情報発信は、ドローン規制とかロボットタクシーとかについてのマイナーな規制緩和の話題だけのように思う。
歩くマナー?
進次郎氏は事前に出掛けていく地域の情報を調べて演説の中にそうした情報を巧みに取り入れ、その土地の方言を使って語りかけることで親しみやすさをアピールしている。しかし、それが自民党の先輩議員のヨイショにまで使われるととても計算高い性格なのだろうかと疑念が湧いてくる。
ガス抜きが仕事
メディアは、国民の人気が高い進次郎氏から安保法制やTPPについての見解を取ったらどうだろうか。有利不利だけで大事な局面で何も発言しないのなら、改憲オタクの宰相のお友達となんら変わらないように思う。前回の衆院選で解散総選挙に苦言を呈したのは、国民に対するガス抜き発言だったのだろうか。
私は、今、安保法制と労働法制いかんでこの国の将来が大きく変わろうとしている局面で何も行動しないなら進次郎氏を信頼することはできない。父の小泉元首相が原発問題で堂々と情報発信しているが、原発問題についても毎月、被災地の福島入りしているだけのようにしか見えないのは残念だ。一部に進次郎氏が原発推進に賛成という情報もネットで散見される。自分の口から見解を語って欲しい。
(追記)
安倍首相が「つまびらかに読んでいない」と国会で答弁したポツダム宣言が砂川判決の前文に書いてある。(政府は後にこの発言を訂正している。)いかに安倍首相の答弁がいい加減か分かる。根拠としている判決すらきちんと読んでいるのか疑わしい。
「そもそも憲法九条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤つて犯すに至つた軍国主義的行動を反省し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて…」(砂川判決の抜粋)
〇【同人誌、ボカロにも影響?】妥結直前のTPP知財条項について徹底解説(全文文字起こし前編)
*著作権には保護期間というものがありますけど、これを大幅に延長しろって言うんですね。著作権は著作者の生きている間、全部。それからその死後50年間は守られて、それから先は誰でも自由に使うことができる。いわば、社会の共有財産になるわけですよね。しかしながら、欧米はこれを90年代に一律で20年延長しました。その結果、死後70年になります。 …TPPで大きな論争になったのは、非親告罪です。…警察が起訴処罰できることになるわけ。そうすると、第三者通報があっただけでも、問題視されちゃうかもしれない。 …最近の報道によれば、TPP交渉は、非親告罪化もその方向で調整しているとNHKが伝えていました。報告機関も、死後70年受け入れの方向で調整しているということが言われた。 …TPP自体に反対というわけではない。でも、交渉の内容が秘密過ぎるから、もうちょっと公開してくれ。みんなに考えさせてくれ、みんなの意見も言わせてくれ。…TPPっていうのは「アメリカのものにしようよ」と言って来ているだけの話なので、生態系を壊されることは間違いないと思うわけです。…アメリカが自国の制度の中で、輸出しようとしないただ唯一のルールがこのフェア・ユース(例外規定)。他国に自分の作品を自由に使われるのは、別に嬉しくないですからね。…ニュース記事のコピペですかね。あんなのは、現行法上、著作権侵害がほとんどだし、引用には当たらないものがほとんどだし、非親告罪化にはストレートに当たりますよね。…例えば、企業内では資料コピーしてるでしょ。それから、北大の田村先生なんかよく例に挙げられるけど、ホームページのプリントアウトだって、あれ複製ですからね。業務目的でやってるんだったら、私的複製は普通成立しないから、形式的には、ホームページをプリントアウトしたら、それで違法っちゃ違法なんです。でも、そんなことはみんな気にしないでやってるわけです。それがちょっとずつ、ちょっとずつ、じわじわ萎縮していった時に、社会全体がどんな感じになるのか。これが突きつけられている問題ですよね。…交渉されている条約ですから、それを国内法化するためには、著作権法の改訂があると思うんですけど、実際どういう形に国内法が可決されるのか。…政府間で協定を結んで帰ってきましたと。次は国会で批准って行為があるので、まずそこで、これを飲むのか飲まないのかっていうのがありますが、今の情勢だったら、与党多数で、そのまま条約として成立しちゃうでしょうと。次に国内法でどうしますかってステップになります。…非親告罪化しなきゃいいっていうただ1点なのに、それを受け入れちゃった後で、国内法整備をやる、運用で対処する、あれやってこれやって。なんでそんな大変なことをするんだと。
〇【同人誌、ボカロにも影響?】妥結直前のTPP知財条項について徹底解説(全文文字起こし後編)
*今回のTPP交渉国の中では、むしろ非親告罪の国のほうが多くて、アメリカなんかが代表国ですよね。じゃあ、アメリカがなんでやれてるの?って言うと、フェア・ユースの規定があるし、訴えられることものともしない国民性がありますよね。裁判大好きですからね、どう考えても。…まさにこれがグローバリズムに巻き込まれたがゆえの悲劇みたいなところがあるんですかね。自分たちのローカルルールで上手くいっていたのに、グローバルルールに参加するとなると、すごく色んなものが変わってしまう可能性があるということですもんね。…知財立国というからには、多分、国際収支をかなり気にしていると思うんだけど、8000億の赤字に対して、政府はなんの説明責任も果たしてないと思いますよ。…これから国の側が、政策を作る側が意識して、ここが厳しくなったんだから、こっちの利用のほうを緩めようみたいな両輪を意識しないと、国際的にもどんどん置いて行かれるような状況になっていく気がする。
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