Windows10へアップグレードするべきかどうか
前回、「次回は、バックアップに使うHDDのパーティションとEaseUS Todo Backup Freeの使い方について私の体験から分かった留意点について報告したい。」と予告したが、その前にWindows10へアップグレードするべきかどうかについて触れておくべきだろう。私は、今回5台(前回の記事からさらに1台追加)のPCをWindows10へアップグレードしてみた。
アップグレードによる大きな不具合はない
アップグレード作業自体による不具合は、これまでのWIndows8等のアップグレードに比べてほとんどないように思う。アップグレード後も深刻な不具合は、今のところ発生していない。軽微な不具合の例としては、直近にアップグレードした富士通のノートPCがアップグレード後に音が出なくなったくらいだ。同社のサイトのよくある質問コーナーに掲載されていた対処方法で問題を解決した。
サウンドのドライバーをアンインストールして、再インストールするだけで直った。他にはこのPCで気に入っていた「パソコンの状態」をバックアップする機能が使えなくなったことだ。ただ、これは機種別注意事項として事前に告知されていたものだ。この機能は、EaseUS Todo Backup Freeのシステムバックアップ機能と同等のもので操作性もよく、高速で圧縮率も高い優れものだった。だから、この機能を捨ててWindows10へアップグレードするべきか実は迷った。と言うのも先にWindows10へアップグレードしたマシンを使ってみて機能、性能面で大きく変わったという実感がなかったからだ。体感速度も操作性もほとんど変わらないというのが私の印象だ。
継続性と情報生産性
インターネットブラウザーが「Internet Explorer」と「Edge」の二つが使えるようにな
ったが、「Edge」はタブレットPC用のソフトという感じだ。タブレットならアップルのiPadの方が数段使いやすいし、アプリも豊富だ。「Edge」は、アップルのブラウザー「Safari」ライクだ。しかし、アップルのMacは私はどうしてもなじめない。だからPCは、私はWindowsを使い続けている。
Macは、デザインも性能も優れていると思うが、ユーザーがカスタマイズして使うには、ブラックボックス的でOSが新しくなるとそれまで使っていたPCでは利用できないという経験を私はしている。そして従来のOSで動くアプリの更新がなくなり、新しいアプリも使えない。互換性をアップルは、重視していないように思う。アップルは革新性で成長してきたように思う。しかし、ユーザーにとって継続性も大切な要素だと思う。iPad等のタブレットは、情報の閲覧という面では、携帯性、操作性が優れていると思うが、情報の生産性という面では道具として使いにくいように思う。
一方、タブレットのOSとしてのWindows10は、中途半端なように思う。タブレットもPCも同じコンセプトで使えるということをユーザーは本当に求めているのだろうか。情報閲覧やメールのやりとりが目的でPCを使っていたユーザーがタブレットやスマホに移行してPCの需要が減っているのは時代の流れのように思う。だからタブレットやスマホのユーザーをWindowsに取り込もうというのがWindows10の一つの狙いだと思うが、この点については、成功する可能性は、現状では低いように思う。
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Windows7ユーザーのWindows8に対する不満解消というもう一つの狙いは、成功しているように思う。個人だけでなく、企業ユーザーのWindows7からWindows10への移行は今後、進んで行くように思う。その理由は、互換性と安定性だ。私は、Windows XPからWindows7を飛ばしてWindows8に移行したのでWindows7の体感的な性能は分からない。
Windows XPは、フリーズが頻発して閉口していたが、Windows8に移行してからフリーズすることは少なくなった。一方でWindows8にしてからデスクトップのアイコンが起動する度に消えてしまうというAsusマシンの不具合は、最後まで解消しなかった。しかし、Windows10へアップグレードしたら解消した。また、プリンターの印刷が途中で止まってしまうという現象も今のところ発生していない。
ビジネス現場での移行が進む?
Windows10になり、デスクトップ画面とタイルアプリ画面が統合され、デザインがすっきりしたように思う。これまでのWindows8では、Windowsボタンで画面を切り替える必要があり、煩わしさが拭えなかった。もっとも私は、タイルアプリ自体は利用していなかった。タイルアプリではなく、通常のソフトの起動ランチャー代わりに使っていた。タスクバーに入りきらない、使用頻度のそれ程高くないソフトだけをタイル画面に登録して使っていた。デスクトップ画面にソフトのアイコンを並べるのが嫌いだったからだ。
Windows10では、Windows7のスタートメニューの横にタイルアプリ画面が表示されるデザインに変更され、使いたいソフトをスタートメニューもしくはタイルアプリ画面から選択できるようになり、ストレスが大きく減った。私は、タイルアプリ画面を以前と同様にタスクバーに表示しきれないソフトを登録してソフト起動ランチャーとして使っている。
こうした使い方をすれば、ビジネスの現場でもWindows10は違和感のないツールとして使えるように思う。業務で困るのが、フリーズや互換性の問題だろう。PCがフリーズすれば業務が止まってしまう。企業にとって業務の革新と継続性はどちらも必要だろうが、業務効率の向上と安定性を伴わない革新は現場には役立たない。Windows10は、革新性は乏しいが、企業の現場に求められる継続性と安定性が向上したOSだと思う。だから、ビジネス分野では、今後、Windows10への移行が進んで行くのだろうと思う。
個人ユーザーはどうするべきか
個人のユーザーが、Windows10へアップグレードする必要があるかどうかは、今の自分が使っているPCに対する満足度で考えるのがいいように思う。PCをたまに使う程度でフリーズもなく、OSをバージョンアップする理由が特にない人にはお勧めしない。また、Windows10へアップグレードした後で一部のアプリが使えないとか、周辺機器が使えないとかの問題が生じたときに自分で対応できない人は、Windows10がプリインストールされた製品を買うべきだろう。ただし、その場合でも一部のアプリや周辺機器の買い換えが必要かもしれない。
一方で、Windows10のアップグレード作業はこれまでに比べてとても簡単で安定性があるので失敗する可能性は低いように思う。Windows10は、アップグレード後一ヶ月以内であれば、元のOSに戻せる機能があるが、戻すための条件がある他、この作業に失敗するとアップグレード前に作っておいたバックアップを使って元に戻す必要がある。バックアップを取らずにWindows10へアップグレードしたユーザーは、リカバリーディスクがあるなら、工場出荷状態に戻せるが、使い始めてからインストールしたアプリはすべて再インストールし直さなければならない。
元のOSがWindows8でWindows8.1へアップグレードしたユーザーは、リカバリー後にWindows8.1へのアップグレード作業も必要だ。こうした煩わしい作業を回避する方法としてサードパーティー製のバックアップソフトを使って事前にバックアップを作っておく方法がある。できればWindowsのバックアップツールで同時にバックアップイメージを作って置くことが望ましい。
サードパーティー製のバックアップソフトを使うメリットはWindowsのバックアップイメージの作成より短時間ででき、バックアップデータの圧縮率が高く、ハードディスクの使用容量も少なくて済むことだ。
バックアップの作成には、USB接続の外付けハードディスクが必須だ。サードパーティー製のバックアップソフトは、EaseUS Todo Backup Freeがいいと思う。次回、このソフトについて私の体験情報を書くつもりでいる。
何も変わっていないように見えるが
Windows10を1ヶ月使ってみての私の感想は、新しいブラウザ「Edge」を利用していないので画面の見た目は大きく変わっておらず、昨日までと何も変わらない日常が続いているという感じだ。妻も何が変わったのかしらと言っている。しかし、そこが一番いいのかもしれない。操作性が維持され、安定性が増し、使い勝手がよくなっている。情報生産性が上がっているように思う。
「Windows Update」は、コントロールパネルから「設定」に移されたりしているが、慣れてくると統一性があるすっきりしたデザインになっていると感じられる。こうした設計変更は、見た目はあまり変わらないけどたとえて言えば話してみるとその成長ぶりを感じさせる大人になった若者のようだ。
アップグレード対象でない機種の方がアップグレードは楽?
ところで、意外なように思うかもしれないが、Windows10のアップグレード対象でない機種の方がアップグレードは楽だった。というのは、メーカー製の独自ユーティリティやドライバーに対するサポートはないが、正直、ユーティリティについては、あれば便利程度のものが多く、なくても困らないものが多い。一方、Windows10のアップグレード対象PCに対するメーカーの主なサポートはこの独自ユーティリティに対するものが大半だ。
富士通のPCの場合、アップグレードの前後に手動によるたくさんの作業が必要だった。富士通のノートPC「LIFEBOOK」には、ドライバーやユーティリティのアップデート用アプリが搭載されており、Windows10にアップグレード後、ひょっとしてこのアップデート用アプリを使えば必要なドライバーやユーティリティの更新が自動的に行われるかもしれないと期待していたが、駄目だった。手動の更新作業をしなくてもPCは正常に動きそうだったが、気持ちが悪いので手動で20件以上のユーティリティの更新作業を行った。正直、ちょっと閉口した。やれやれというところか。 つづく
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