金曜コンサート
先週の金曜日に日比谷公園に行った。午前中、有楽町で用事を済ませて小洞天でシュウマイを食べ終わったのが12時過ぎだった。2年前に日比谷公園で見たあじさいのことを思い出して突然、日比谷公園に行くことにした。
横に交番のある公園の入口から入り、左側に「心字池」を見ながら通路を歩いて行くと右側に前回、感激した「ボタンクサギ」があった。しかし、残念ながら可憐な花はまだ咲いていなかった。前回は6月末の金曜日だったから、ちょっと早すぎたようだ。
通路を歩いて行くと、遠くから楽器の音が聞こえる。ひょっとして思ってその方向に歩いて行くと野外コンサート会場(小音楽堂)で忘れていた「金曜コンサート」が開催されていた。今回は、まったくの気まぐれであじさいを公園に見に来たので、コンサートのことはまったく頭になかった。
2年前の6月に来た時は、目的の一つがこの金曜コンサートだった。あの時は、激しい雨が途中で降り出したためにコンサートは中止になってしまった。しかし、公園内の図書館で雨宿りした後に見た雨後のあじさいは瑞々しく、とてもきれいだった。
コンサートは、ちょうど中盤に差し掛かっていた。演奏予定の8曲中の4曲目が終わり、5曲目の「イン・ザ・ムード」というタイトルの曲を司会者が紹介していた。前回と異なり、日差しが気になる程のいい天気だった。
観客は、帽子を被った高齢者が大半だった。おそらく、この昼休み時間のコンサートの常連さんなのだろう。緑に囲まれたステージではアイボリーの制服を着た東京消防庁音楽隊のメンバーが演奏していた。ドラム以外はすべて管楽器だった。
On The Mall
緑の枝の向こうの青空に楽器の音が吸い込まれていく。野外のコンサートもいいものだと素直に思う。アンコールとして最後に演奏された「木陰の散歩道」が印象に残った。原題は「On The Mall」だ。
ショッピングセンターの「モール」の本来の意味が「木陰のある散歩道」であることを初めて知った。ネットで調べてみると作曲者のE.F.ゴールドマンが「バンドを率いてセントラルパークで毎年夏にフリーコンサートを開いていたが、その公園のモールという散歩道を歩く人々の姿を描いたのがこの曲である。」そうだ。
私は、この行進曲を聴いて運動会を思い出した。私の記憶違いでなければ、小学校の運動会でこの曲が入場曲としてかけられていたように思う。
この行進曲は、よきアメリカのような雰囲気を持っている。この野外コンサートに集っている老人たちに連帯感を醸し出し、高揚させる不思議な力を持っているのではないかという妄想を私は抱いてしまった。
いつか来た道
行進曲を聴きながら学徒出陣で晴れた日に若者が戦場に送り出されていく姿を思い浮かべてしまった。私のこどもの頃は、テレビのドラマの中で学徒出陣の場面がよく使われていたように思う。戦後は、決して遠い昔ではなかった。軍歌もドラマの中や映画でよく流れていたように思う。
無論、「木陰の散歩道」という行進曲は、学徒出陣に使われた行進曲とは違う。しかし、行進曲は、聴くものに不思議な高揚感を与え、戦争という凄惨な行為を美化してしまうような魔力があったのではないだろうか。
日比谷公園の晴れ渡った空の下で行進曲を聴くと、学徒出陣のときも行進曲を聴きながら出征していく兵士と見送る家族は不思議な高揚感と連帯感を覚えていたのではないだろうか。悲壮感に酔っていたことはなかっただろうか。行進曲は、まるで麻薬のような作用を聴く者にもたらしていたのではないだろうか。
と考えながらコンサート会場を後にした。残念ながら前回、図書館の近くにひっそりと咲いていたあじさいは、まだ十分に花が開いていなかった。 おしまい
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