運用方法の見直しによる損失累計は10兆円?
マスコミは、平成15年度のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用損を5兆円と報じている。さらに、東京新聞は7月5日付の記事で「二〇一六年四~六月期に約五兆円の運用損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で分かった。…一五年度も五兆数千億円の損失を出す見込みが既に明らかになっており、一四年度末と比較した場合の損失は約十兆円に膨らむ見通しとなった。」と報じている。
👉公的年金、2015年度は5兆円超の運用損 公表は参院選の後に
👉4~6月も年金運用損5兆円 英離脱で株価急落(2016年7月5日 東京新聞)
👉GPIFの10~12月期、運用損14兆8039億円 世界株安で最大に (2019年2月1日 日本経済新聞)
参院選の本当の争点は、GPIFによる第2の「消えた年金問題」なのかもしれない。年金資金の株による運用損の最大の問題は、株式運用のイロハと言われている「損切り」ができないことだと思う。英語の「ストップ・ロス」の方が直接的で意味がわかりやすい。
損切りができない塩漬け
素人が株式運用に失敗して損失が拡大する原因が適切な損切りができずにずるずると損失が増えてしまうことにあると言われている。通常、現物による株式投資なら損失が拡大したら諦めて損切りを行うことはいつでも可能だ。株を処分して損失を確定することが可能だ。
しかし、GPIFの運用手法は損切りができない塩漬けだ。GPIFの場合、投資額が大きすぎて迂闊に損切りすることはできない。仮に株価が戻ったとしても一篇に処分すれば、相場の下落を招きかねない。だから、いつまで経っても投資を回収することはできない。
目的は運用成績ではなく、株価を上げること?
素人でも分かりそうな理屈なのに、それでもこうしたギャンブルを行ったのは運用成績を上げることより株価を上げることが目的だったのだろう。運用成果を長期的に見てくれというが、仮に一時的に株価が戻ったとしても利益を確定できない運用を投資と呼ぶことができるだろうか。
👉年金積立金に多額の運用損見通し 若い世代の給付減も(東京新聞 2016年7月8日)~GPIFが株式の購入を増やすことで株価の上昇が見込まれることから、安倍首相はダボス会議以降も「日本は買い」と海外の投資家にアピール。GPIFの運用基準を審議する運用委員会の委員は一四年四月に入れ替えられ、委員長には株投資の拡大に積極的な学識者が就いた。…日本総研の西沢和彦氏は「運用に失敗し積立金が想定より早く減れば、若い世代が将来受け取る年金が減額される可能性が出る」と懸念を示す。保険料を上げたり税金投入を増やすなどの事態も考えられる。
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年金資金が超長期の塩漬けになる可能性はとても高い。年金資金の多くがいつまで経っても不安定なリスク資金として運用され続けていくことになるだろう。政府は、国民に対してきちんと今後の出口戦略を明示する義務がある。そうでなければ、今後、何十年も次の政権への負の遺産としてたらい回しされていくことになる。
今後、株価が変動する度に一喜一憂しなければならなくなる。株価をコントロールすることは原発同様に難しいと思うのだが…。買い続けることも売ることもできない日が来るのではないだろうか。次は郵政資金でも投入するのだろうか。
そして誰も責任を取らないデジャブ
そして、最も大きな問題はこの第2の失われた年金問題について政府も官僚も責任を取らないことだと思う。運用リスクの結果責任は国民が負うことになる。安倍総理は国会でそのことを認めている。
GPIFの運用資金は、政府の金ではない。私たち国民の大切な貯金だ。いつからその運用を政府に白紙委任したのだろうか。選挙の公約としていつ提示されたのだろうか。責任を取らない政府をどうして国民は追及しないのだろうか。不思議な国の不思議な国民。 おしまい
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♦年金積立金を米インフラ投資に? 政権が運用関与、疑惑再燃~海外インフラについても、投資信託の発行する証券を購入する形で、間接的にお金を出せる。インフラ関連投資の上限は資産の5%に当たる約七兆円。実際には投資額は一千億円未満にとどまっており、拡大余地はある。…GPIFの高橋則広理事長は国会で「結果として米国のインフラに向かうことはあり得る」としており、政府関与を巡る疑惑は今後もくすぶり続けそうだ。(2017年2月10日 東京新聞)
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