ベンゼンって何?
3月に公表された豊洲市場の地下水の再調査でもベンゼン等の有害物質が検出されたことが確認された。ベンゼンについて調べてみたらとても処理の難しい有害物質のようだ。
豊洲市場問題をどうするかという判断は小池知事だけに押し付ける問題ではないように思う。業界団体の推進派の理事が早く結論を出せとエゴむき出しで小池都知事を非難しているが、こうした態度は都民の反感を買うだけだと思う。
この人はこれまでの都の情報公開に対する姿勢を批判する一方で小池都知事の情報公開を通じた移転検討の手続きも非難している。しかし、移転を急いで問題が生じたときに誰が責任を取るのだろうか。きっとそのときは都知事の所為にするつもりだろう。
だいたい豊洲の土壌汚染については築地市場の人たちは知っていて移転に賛成した訳だから必ずしも被害者とは言えないように思う。もともと東京ガスの工場跡地なのだから完全に安全が保証されるべきだと考える方がおかしいように思う。
♦豊洲市場:「無害化どうなる」…市場業者、怒りあらわ~「都は豊洲を無害化すると我々に説明した。信用できない」(2017年3月19日 毎日新聞)
ベンゼンは食品に対する影響だけでなく、豊洲市場で働く人の健康にも影響する。気化しやすいベンゼンが呼吸だけでなく、皮膚から入る可能性はどのくらいあるのだろうか。こうしたリスクについて推進派の人々はどれだけ調べているのだろうか。
都の情報公開に対して不信に思っているならこうした問題について自分たちも勉強するべきだと思う。もし、市場開設後に従業員に健康被害が生じた場合は事業者も責任を問われる可能性がある。何故なら都がすべての有害物質について健康被害の可能性がないことを保証することなどできるはずもないからだ。
もし、小池氏が都知事になっていなければ豊洲市場の安全問題は表面化しなかっただろう。しかし、移転後に土壌汚染が発覚すれば風評被害では済まされなかっただろう。市場関係者はそれこそ福島の原発事故被害者と同じ立場に立っていただろう。
問題が生じたときに都知事が代わっていれば原因の究明も責任の所在も不明になり、十分な賠償が受けられる可能性が低いことは原発事故から6年経っても福島に戻れない人がたくさんいる現実を考えれば分かるはずだ。行政なんて本当に当てにならないし、信用もできない。
小池知事の情報公開を評価~今後の都政運営の教訓
築地市場の人々は小池知事の情報公開を批判するのでなく、感謝するべきだと思う。豊洲市場問題を都議選の争点にすることは東京都の不透明な行政を改善するために不可欠なことだと思う。一党独裁のようなこれまでの議会運営からさようならをするためには必要なことだと思う。
豊洲市場問題は都政の私物化と腐った都庁の体質を変えるために徹底的に究明されるべき問題だと思う。都議会での百条委員会は石原慎太郎のつるし上げに意味があるのではなく、今後の都政運営の教訓として活用されるべきだろう。
豊洲市場を暫定施設として築地市場跡地に築地市場を復元する
都政運営と豊洲の地下水汚染の問題が解明された後に初めて築地の移転方法を決定するべきだと思う。そして、もし都議選までに目途が付くなら築地市場の移転方法を都議選で問うてはどうだろうか。
仮に今回、検出された有害物質が一定期間コントロール可能なら豊洲市場を築地の暫定移転先としてはどうだろうか。築地市場移転後については既に跡地利用についての調査報告書も作られており、食指を伸ばしている海外の事業者が築地市場の視察に来ているようだが、築地市場跡地には築地市場を造るのが一番望ましい選択のように思う。
豊洲への移転を決めた背景には築地市場移転後の跡地に対する権益があるのかもしれない。いずれにせよ、築地市場の「魚河岸文化」を残すという視点で築地市場跡地に築地市場を復元することが一番いいと思う。改修という選択も可能ならあるのかもしれない。
築地市場を残すことは日本の文化を残すことになるだろう。レガシーのはずの国立競技場はあえなく解体されたしまったが、同じ轍を踏まないことが大切。幸いに築地市場はまだ残っている。その意味でも小池知事の情報公開と判断を私は評価している。
情報公開にこそ日本の未来がある~国民の信頼の基盤
情報公開に後ろ向きの行政、嘘を言い、失敗してもその責任を取らない行政なんか信用できない。安倍政権になって一番の問題は情報隠蔽、情報コントロールだ。日本の国民は常に慌てずに対処できる冷静な判断力を持っていると私は思う。だから悪い情報もありのままに伝える勇気が行政に求められている。
「改憲項目の絞り込みをめざす自民党は、自然災害やテロなどの緊急時に国会議員の任期延長を認める緊急事態条項の創設を主張」しているが、そんなものが必要ないことは戦後70年の日本の歩みを振り返ればすぐに分かる。過去にオウムにより引き起こされた地下鉄サリン事件等の幾多のテロが日本で既に起きているが、現行憲法下で何の問題なく処理できている。若者も根拠のない不安を抱く老人も過去の歴史を勉強してみるべきだと思う。
♦「共謀罪」閣議決定 刑法の原則が覆る怖さ~安倍晋三首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をした。これは明らかな詭弁(きべん)というべきである。そもそも日本はテロに対して無防備ではない。テロ防止に関する十三もの国際条約を日本は締結している。ハイジャック防止条約、人質行為防止条約、爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約、核テロリズム防止条約…。同時に国内法も整備している。…確かに国連の国際組織犯罪防止条約の締約国は百八十七カ国・地域にのぼる。だが、そのために共謀罪を新設した国はノルウェーやブルガリアなどだけだ。むしろ国連は「国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めている。「共謀罪がなくとも条約の締結は可能だ」とする日弁連の意見に賛同する。(2017年3月22日 東京新聞)
そもそも東北大震災どころか、熊本の震災すら国や自治体が十分な対応ができていないのに緊急事態条項を憲法に入れたら行政が機能するという理屈は成り立たない。災害で地元の復旧に最も貢献しているのは有志によるボランティア活動というのが真実だろう。共謀罪の内容も現在の法整備でカバーできているという意見が本当だと思う。
トランプ以下の橋下氏
橋下氏が相変わらずトランプ以下のツイートを繰り返している。トランプの発言は幼稚で最低だけれど裏がない。しかし、自ら性格が悪いと公言している橋下氏の発言は嘘と詭弁に満ちているように思う。
橋下氏は気化しやすいベンゼンを「吸引すると気管支炎や肺炎が生じる可能性」があることもきっと知っていることだろう。ベンゼンは飲まなくても吸引しなくても肌から体内に入ることも知っていることだろう。
気管支炎のような呼吸器系の病気は生活の質に大きく影響する病気だ。原発の安全性を説明する際にに使われる放射能被ばくによる甲状腺がんについての発生確率を引用するような意図をもった説明だ。
「水にはほとんど溶けず、強い揮発性があるため、気体として空気に混じり」、「常温では無色の液体、独特の甘い香りがするため芳香族炭化水素と呼ばれる」ベンゼンが含まれる豊洲市場の地下水を入れた瓶を事務所のトイレに芳香剤代わりに置く勇気が橋下氏にあるだろうか。ちなみに「5.5℃以上で液体となり、80℃で沸騰します。強い引火性があり、燃えると大量のススを出します。」ということだ。
そもそも築地市場の移転は老朽化した築地市場を安心で安全な場所に市場を移転させるのが本来の目的だったのではないだろうか。きちんと都民に情報公開しないまま出来上がってしまった”安全で安心とは言えない豊洲市場”と築地市場を比較して安全性を云々(安倍総理流に読むと「デンデン」)すること自体が詭弁そのものだろう。
問題をどっちがましかという議論にすり替えようという意図を強く感じる。普段は朝日新聞を目の敵にしている橋下氏は、「朝日新聞も最近は冷静な報道をするようになってきた。」と朝日を持ち上げ、記事の内容を引用して「その水を毎日2リットル、70年間飲み続けた場合」であることを強調している。ことあるごとに学者やマスコミをこき下ろしといて自分の主張に都合のいい内容だけ利用するずる賢さを私は感じる。
仕事に誇りを持ったプロ集団の働く姿こそ築地市場の魅力
私は、豊洲市場で気化しやすいベンゼン等の有毒物質を一定期間でもコントロール可能ならその期間だけ暫定的に築地市場を豊洲市場移してはどうかと考えている。その間に老朽化した築地市場を改修するか建て替えて「魚河岸文化」を継承して欲しいと願っている。
もうショッピングセンターやホテルはこれ以上いらない。ましてカジノなど論外だ。虎ノ門ヒルズにしても東急プラザ銀座にしても最近建てられたビルには全然、新鮮味を感じない。一度訪れるとまた訪れたいという気持ちが湧いてこない。どこの再開発も同じような高層ビルやショッピングセンターが建てられてどこへ行っても同じようなものばかりで私は最近うんざりしている。
コンサルタントに頼るからどこも同じようなものになってしまうのだろう。思い付きや頭の中の観念で作られたものにヒトは愛着を持たない。長い時間の中で生まれ、生活に根差した文化にヒトは共感を覚える。
ホテルだってオリンピックが終われば過剰になっているのではないだろうか。最近、テレビで中国やアジアの都市の姿が映し出されると日本の都市とあまり違わないように感じる。外国人も他の国と変わらない日本に魅力を感じなくなる日も近いように思う。
ただ一方でただ復元すればいいというものではないとも思う。例えば、最近、建て替えられた歌舞伎座の地下のフロアにはセブンイレブンやタリーズが併設されているが、はっきり言ってチェーン店なんかいらないと思う。できれば歌舞伎座にしかない造りにするべきだったのではないかと思う。しかも地下のフロアのトイレは狭くてスタバのトイレとあまり変わらないレベルのように思う。
もし築地市場を暫定移転して築地跡地に新しい築地市場を復元することが可能なら老舗が集まり、プロ集団が働く重厚な「魚河岸文化」を再現して欲しい。仕事に誇りを持ったプロ集団の働く姿こそ築地市場の魅力のように思う。少子高齢化する日本で活気のある市場は、日本各地からの来訪者だけでなく、海外からやって来る旅行者にも夢を与える場所になるだろう。
豊洲から築地に再移転した後の豊洲の活用方法についてはじっくり検討すればいいと思う。食品以外の物流センターに利用するとか、あるいは更地にしてから再利用することもあるかもしれない。
いずれにせよ、今回の豊洲市場騒動で建設費問題、施設の安心安全問題が解明されれば豊洲の利活用の道が開けるように思う。一番大切なのは情報公開。失敗や悪い知らせを選別せずに国民に情報公開して欲しいと思う。国民に知らせることで国民も真剣に問題を共有することができる。 おしまい
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